株式会社井上工業【前編】

職人が足りない。でも未来は明るい。
多様性が現場を強くする、井上工業が実践する外国籍人財との共創【前編】
目次
基本情報
サマリー
・特定技能人財の受入れ前
・特定技能人財の受入れ後
前編
・はじめに
・企業成長の足かせだった「職人不足」
・左官の外国人部隊をつくって、長期的な戦力に
後編 ※近日中に公開予定
・特定技能人財の定着と社内の活性化
・今後の展開
基本情報
社名:株式会社井上工業(東京都)
代表者名:代表取締役 井上伸一
事業内容:一般左官工事、特殊左官工事
WEB: https://inoue-plaster.com/
特定技能分野:建設業(建築)
特定技能国籍:インドネシア、ベトナム
サマリー
特定技能人財の受入れ前
深刻な職人不足に直面しており、日本国内の左官職人の就業者数は減少の一途をたどっています。
株式会社井上工業は、旺盛な左官工事の需要に対し人員不足から工事を断らざる得ない状況がありました。
特定技能人財の受入れ後
株式会社井上工業では、左官技術の訓練・教育機会、スキルアップの可視化、大規模現場からの現場デビュー、日本人職長と特定技能人財のチーム体制など、定着に向けた育成環境と仕組みの整備が進んでいます。
特定技能1号から2号への移行を早期に実現する仕組みを構築し、長期就労による人材の定着・戦力化を加速させることで、今の倍の仕事量を実現していきたいと考えています。
前編
はじめに
■左官工事の現場(写真提供:株式会社井上工業)
株式会社井上工業(所在:東京都練馬区、代表取締役:井上伸一)は、関東全域で、主に新築マンションの左官工事を手掛けています。
井上工業は、深刻な作業員(以下、職人)不足を背景に、2011年の井上伸一氏の社長就任以降、早くから積極的な採用強化に乗り出し、女性職人のチーム化やインターンシップの開始、働き方改革による労働時間の削減など新たな取組みを次々に開始しています。
そして、2020年代にはいると、「左官の外国人部隊を作る」との井上社長の方針のもと、特定技能人材の積極的な受け入れと育成に取り組んでいます。
そして、早くも「特定技能1号から2号への移行」に意義を見出し、登録支援機関である株式会社Proud Partnersとともに早期に特定技能2号人財を輩出する仕組みの構築に乗り出しています。
同社の取り組みからは、外国籍人材を”受け入れる”のではなく、”共に成長する仲間として育てる”という姿勢が伺えます。
井上社長はこう語ります。
「私は現在の人員体制を2倍に拡大し、もっと工事を請けていきたいと考えています。それには、即戦力としての特定技能人財の存在が不可欠です。さらに言うと、特定技能 1号から2号に移行できれば、より長期就労が可能となり、人財の定着・戦力化を加速できます。今の目標は、10人を特定技能2号に合格させたいですね。」
企業成長の足かせだった「職人不足」
井上工業は、左官・SL(セルフレベリング材)・モルタルポンプ圧送・打放素地仕上げ、その他左官工事に関する工事全般を手掛ける、全国でも数少ない左官専門の企業です。
左官の仕事は見た目以上に熟練技能が必要ですが、井上工業が手掛ける左官工事の現場は、最近は、特に1戸あたりの分譲価格が1億円を超える超高級マンションの新築工事が多く、品質要求は非常に高いと言います。
■左官工事の現場(写真提供:株式会社井上工業)
「新築のマンション工事の左官工事では、タイル屋さんがタイルを貼る前に我々が下地を平らにするのですが、わずかな凹凸や強度不足が、見栄えの悪さやタイルの浮きなどの不具合につながることがあるので、どれも手が抜けないんです。また、床工事も同様で、フローリング施工前のコンクリート下地にある不陸(凹凸)や傾斜を補正して平滑な面を作ったりします。いずれにしても、精度の高い施工が求められます。(井上社長)」
井上工業の強みは、古来の伝統技術と先進技術を融合した「確かな技術力」。井上社長によれば、「左官のコテを使って壁や床に塗りつける技術っていうのは難しいです。左官職人が一人前になるまでに約10年はかかる」と言います。しかし、日本人の左官職人の数は1975年をピークに、2014年には10分の1まで減り(国土交通省「建設工業施行統計調査報告」を参照)、年々減少の一途をたどっています。
厚生労働省によれば左官職人の就業者数は、現在、全国で約6万人ですが、労働者過不足判断 (出典:令和7年 厚生労働省「労働経済動向調査」)を見てみると、正社員の就労形態が最も人手不足であることがわかります。
【出典】厚労省の「職業情報サイトjob tag」
井上社長はこう語ります。
「現在、左官工事の需要は旺盛で引き合いも多いのですが、人員不足のため仕事を断っている状況です。せっかくの企業成長の機会なのに、非常にもったいない。(井上社長)」
左官の外国人部隊をつくって、長期的な戦力に
そこで、井上社長は、将来の技能継承も視野に入れ、特定技能制度(建設分野)を活用した外国籍人財の採用と育成を決断します。
「特定技能人財だけの外国人部隊を作って、長期的な戦力化を目指そうと思いました。(井上社長)」
そして、2020年、インドネシアから技能実習生を初めて受け入れ、2022年10月には特定技能1号人財(インドネシア)を採用しました。今では15名の特定技能1号人財(インドネシア、ベトナム)が同社で活躍しています。
井上社長はこう語ります。
「特定技能2号になれば家族も呼べる可能性があるので、本人のモチベーションも上がります。
左官は難しい仕事ですが、しっかり育てれば必ず戦力になります。(井上社長)」
実際、井上工業では技術習得の機会、スキルアップ(キャリアアップ)の道筋といった育成環境が非常に整備されています。
技術習得の機会
■株式会社 井上工業の新座事務所での技術教育
井上工業では、閑散期や雨天で左官工事ができないときは、自社ビル1階で左官技術の練習をするようにしています。技術教育には、日本人の熟練職人が特定技能人財にマンツーマンで塗り方を指導するなど、実地訓練の機会が豊富です。
上記の取組みに加えて、井上工業では、特定技能人財の現場での実務経験の積み方にも工夫が見られます。同社ではまず簡単な作業から任せると言います。
「簡単な作業ならすぐに現場に出られます。左官工事には難易度の幅があるんです。例えば、コンクリート表面の小さな気泡(ピンホール)を埋める作業などは、比較的すぐできるようになります。
それに、すぐ現場に送り出してもなんとかなる、なんとかやる人もいます。
当社の場合、難しい仕事から簡単な仕事まで幅広くあるので、どういう仕事ができるようになったのか分かりやすいのかもしれません。ホームページにもキャリアステップのようなものを公開しています。左官の仕事の難易度がみんなに見えるので、「ここまでできるようになった」というように、ステップアップの段階が分かりやすいのだと思います。(井上社長)」
明確なキャリアアップの道筋
■株式会社 井上工業ウェブサイトより
井上工業のホームページにはキャリアステップ(2級技能士 → 1級技能士 → 職長 → 基幹技能者)が公開されており、外国籍人材にも明確な成長ルートが示されているため、本人が成長を実感しやすい仕組みになっています。
特定技能1号から2号への移行促進
井上工業では、数年内のベテラン技術者(70代中心)の退職を見据え、次世代の現場リーダーの育成も開始しています。特定技能人財の中で、職長候補となりえる人財の選抜・育成を進めています。具体的には、特定技能1号人財が2号に移行するための、特定技能2号評価試験対策や班長または職長としての実務経験を積むための教育を本格化させています。
「特定技能 1号から2号に移行できれば、より長期就労が可能となり、人財の定着・戦力化を加速できます。特定技能2号になると彼らも家族も呼べるのでやる気も出ますしね。今の目標は、10人を特定技能2号に合格させたいですね。(井上社長)」
外国人就労者に関する業務全般を担当する石橋氏は、オリジナルテキストでの学習支援について、こう語ります。
「特定技能2号に移行するための職長教育のオリジナルテキストを作成して配布しました。左官の団体で使っているテキストをべースに、日本語にふりがなでルビをひたすらつけたり、インドネシア語を併記しましたね。」
■職長教育のオリジナルテキスト(写真提供:株式会社井上工業)
(後編に続く)
関連リンク
・株式会社Proud Partners、特定技能制度(建設)の登録支援機関としての強み
・特定技能人財に関する問合せ
・株式会社 井上工業

