株式会社井上工業【後編】
職人が足りない。でも未来は明るい。
多様性が現場を強くする、井上工業が実践する外国籍人財との共創【後編】
目次
基本情報
サマリー
・特定技能人財の受入れ前
・特定技能人財の受入れ後
前編の振り返り
後編
・特定技能人財の定着と社内の活性化
・今後の展開
基本情報
社名:株式会社井上工業(東京都)
代表者名:代表取締役 井上伸一
事業内容:一般左官工事、特殊左官工事
WEB: https://inoue-plaster.com/
特定技能分野:建設業(建築)
特定技能国籍:インドネシア、ベトナム
サマリー
特定技能人財の受入れ前
深刻な職人不足に直面しており、日本国内の左官職人の就業者数は減少の一途をたどっています。
株式会社井上工業は、旺盛な左官工事の需要に対し人員不足から工事を断らざる得ない状況がありました。
特定技能人財の受入れ後
株式会社井上工業では、左官技術の訓練・教育機会、スキルアップの可視化、大規模現場からの現場デビュー、日本人職長と特定技能人財のチーム体制など、定着に向けた育成環境と仕組みの整備が進んでいます。
特定技能1号から2号への移行を早期に実現する仕組みを構築し、長期就労による人材の定着・戦力化を加速させることで、今の倍の仕事量を実現していきたいと考えています。
前編の振り返り
井上工業は左官・セルフレベリング材施工・モルタル圧送などを専門とする全国でも希少な左官企業で、特に1戸1億円超の高級マンションの新築工事を多く手掛けています。
井上工業は確かな技術力で、工事需要は旺盛にもかかわらず人手不足で仕事を断る状況が続いていたそうです。
そんな中、井上社長は技能継承と戦力確保のため特定技能制度を活用し、外国人材の採用・育成に踏み切りました。現在はインドネシア・ベトナム出身の特定技能1号人材15名が活躍しています。
井上工業における特定技能人財受入れのポイント
・井上工業では、自社施設での実技練習や熟練職人による指導、簡単な作業から段階的に任せる仕組みなど、育成環境が整備されています
・就労者のキャリアステップを明示し、特定技能1号から2号への移行支援も強化しています。
・職長候補の育成や特定技能2号試験の対策、独自テキストの作成などを進めており、特定技能人財の長期的な戦力化と定着を目指しています。

■職長教育のオリジナルテキスト(写真提供:株式会社井上工業)
後編では、井上工業における特定技能人財の定着に向けた工夫と今後の展開をご紹介します。
後編
特定技能人財の定着と社内の活性化
井上工業では、定着に向けた取組にも余念がありません。
1つは、大規模現場からの現場デビューです。
職人が3名ほどの小規模現場は会話量が多く、特定技能人財にとっては言語面で負担が大きいため、まずは30名ほどの職人が必要な大規模現場で経験を積ませると言います。
2つ目は、チーム体制です。
特定技能人財が現場で楽しく仕事ができるように、日本人の職長と特定技能人財2~3名のチーム編成をとるようにしていると言います。
「遊び感覚ではないですけれど、孤立しがちな一人よりも2、3人体制のほうが飽きないと思うんです。しかも、日本語が得意な人と初心者を組み合わせることで、自然とサポートし合えるたり、自然な形で日本語に慣れていけるようにもしています。それが長く続けられる秘訣かなとおもいます。(井上社長)」
「また、日本人の職長さんにも、外国籍人財への接し方について事前にポイントのようなものを共有するようにしています。現場には、まだまだ昔ながらの職人気質の職長さんも多いのですが、昔と今では指導の仕方や相手の受け取り方が違うことを意識してもらっています。それでもトラブルが発生した場合は、そこまで多くはないのですが、私か石橋が間に入って解決しています。(井上社長)」
井上工業は、職長も交えて外国籍人財への接し方や指導方法、言動配慮について継続的に教育を実施しながら、日本語レベルが様々な特定技能人財でチームを組み、総勢10名くらいの特定技能人財が大規模現場で実務を経験することで、自然と日本語や現場ルールに慣れていくような仕組みにしています。
3つ目が仕事を離れた生活面での文化・宗教面への配慮です。
井上工業で活躍する特定技能人財の中にはイスラム教徒もいますが、互いに尊重し合う文化が根付いています。
石橋氏はこう言います。
「弊社の寮では、クリスチャンとムスリムの外国籍人財が3人で暮らしている部屋がありますが、例えばムスリムのお祈りの時間帯は静かにするなど、配慮しながら生活しているようです。(石橋氏)」
井上社長はさらに、外国籍人材が職長として活躍する未来を描いています。
「これからは外国人の時代になると思いますね。職人になるのは外国籍人財だけです。当社では、職人は外国籍人財だけにしてしまおうとか思っています。(井上社長)」
今後の展開
同社ではこれまでインドネシア・ベトナム出身者を中心に外国籍人財を受け入れていますが、今後、さらに多様な国籍の特定技能人材の獲得にも前向きです。
特定技能人財の採用面接で重視するポイントは「真面目さ」と「コミュニケーションの姿勢」。オンライン面接でも、事前準備の有無や受け答えから人柄を見極めていると言います。

■株式会社 井上工業 石橋 悠真 氏
石橋氏はこう語ります。「日本のことや井上工業のことを事前に調べてくる人は、やはり真面目だと感じます。
もちろん、日本語をすでに話せる方は目を見張るものがありますし、面白そうだなと思える方も採用します。最近ですと、面接で「日本の歌を歌ってアピールしてくれた方や、腕立て伏せをして健康さをアピールしてくれる方だとか。あとは、よく笑う人や、現場の雰囲気を明るくしてくれそうな方も歓迎しています。よく笑う子だったら、現場にいても、職長さんが優しくしてくれるというのもあります。
また、社内でも、外国籍人材の存在でいろいろな会話ができて楽しいですし、日本人社員にも良い刺激が生まれていると感じています。(石橋氏)」
同社は、女性職人の採用やLGBTQへの理解促進、さらには自衛隊出身者の採用など、多様性のある組織づくりにも積極的です。
渋谷でのデジタルサイネージ広告や自社テーマソング制作など、日本人の採用にむけても新しい取り組みも次々と実施しています。
「みんなが豊かになれる会社にしたいんです。当社の場合、職人が増えれば倍の仕事ができると考えています。特定技能の採用、育成は先行投資ですね。特定技能人財を含め社員が、楽しく、長く当社で活躍できるような取り組みは続けていきたい。交流会のようなイベントも社内外で検討しています。(井上社長)」
そして、井上社長は最後に今後の抱負をこう語ります。
「特定技能 2号になることで、より長期就労が可能となり、会社としては左官職人の定着が加速できます。また、特定技能1号人財に必要な活動サポート(登録支援機関による支援)が不要になります。
まずは、早期に、特定技能1号人財10人を特定技能2号に合格させたいです。そのためにも、登録支援機関である株式会社Proud Partnersには、早期に特定技能2号人財を輩出できる仕組み、教育体制の構築をサポートいただきたい。
そして2号合格者がでたら、特定技能1号の枠が空くので1号人財を追加で採用し、同様に2号移行に向けた育成を進めます。育成と特定技能2号への移行を循環させていくイメージで、長期就労による職人確保を実現し、企業成長につなげていきたいです。(井上社長)」
以上
関連リンク
・株式会社 井上工業
・前編の記事
・株式会社Proud Partners、特定技能制度(建設)の登録支援機関としての強み
・特定技能人財に関する問合せ

