CASEお客様の声

株式会社 松建工務店【後編】

株式会社 松建工務店【後編】

利益率は2倍以上、売上は1.5倍に。次に見据えるのは特定技能人財の母国での事業展開

目次

基本情報
サマリー
特定技能人財の受入れ前
特定技能人財の受入れ後
前編の振り返り
後編
「そこにあるだろ、それ持ってきて」ーー現場で気づいた、日本人側の課題
上も下もない、ひとつの輪で現場を楽しくやりきる
人財に長く働いてほしいからこその「社内の環境整備」
日本人の若手人財からの応募も
今後の展開
  -「住まい」の確保と自社寮の建設
  -特定技能人財の母国での事業展開(海外進出)
  -特定技能人財を受け入れる企業の声を届けたい
数字で見る、特定技能人財の受入れ前と受入れ後
関連リンク

基本情報

社名:株式会社 松建工務店(東京都)
代表者名:代表取締役 松本建治(まつもと たけはる)
事業内容:型枠工事
特定技能分野:建設業(建築)
特定技能国籍:ベトナム、インドネシア
WEB: https://matsukenkoumuten.com/

サマリー

特定技能人財の受入れ前

・型枠工事は、型枠の製作、現場での建込みなど手作業によるところが多いため、どうしても一定数のマンパワーが必要となります。松建工務店では、特定技能人財の受入れ前の2022年当時、従業員数としては総勢11名のうち型枠大工は5名。絶対数としての型枠大工の不足により、自社施工の割合が少なく協力会社に手間工事を依頼するか、やむなく仕事自体を断ることが多く、毎月の現場数は10現場程度、利益率は5〜8%程度に留まっていました。

・今後の企業成長に向けた事業構造の改善と人員補強をどう進めるか、型枠大工の不足による失注を避けることが当時の経営課題の一つでした。

・松本社長は、外国籍人財の雇用に踏みだすことも検討していましたが、技能実習生を受け入れる同業他社を見て、「その場しのぎで人を増やすだけでは、本当の意味での人財の定着や建設業界の発展につながらないのではないか」という違和感を抱いていたそうです。

特定技能人財の受入れ後

・2022年10月にベトナム出身の特定技能人財2名、2025年1月にインドネシア出身の特定技能人財1名を受け入れ、型枠工事の中枢を担える人財としての育成を開始します。

・特定技能人財の育成が順調に進みだした2024年には技能実習生3名を受入れ、職長候補となった特定技能人財が、技能実習生の指導役を担う体制が生まれています。工事の内製化(自社施工比率の向上)などの事業構造の改善も進み、毎月の現場数は17〜22現場に増加、利益率も平均12〜18%(一部の現場では利益率25%)に上昇、売上高は2022年に比べ1.5倍となりました。

・人材の定着に向けた日本人職長・社員の意識改革や労務環境の改善、SNS等による情報発信にも挑戦し、現在の松建工務店は総勢18名体制に拡大しています。日本人社員の採用にも成功し、今後は、特定技能人材の母国での事業開始・現地法人の設立にも意欲的です。


【参考】松建工務店_外国籍人財の雇用と定着の歩み
2022年秋:ベトナム出身の特定技能人財2名を雇い入れ
2024年秋:インドネシアから技能実習生を3名を受け入れ
2025年:1月と6月に、インドネシアから計2名の特定技能人財を雇い入れ

前編の振り返り

■型枠大工による、木製型枠の製作の様子(写真提供:株式会社松建工務店)

 株式会社松建工務店(所在:東京都練馬区、代表取締役:松本 建治)は、型枠工事専門にとどまらず、大工工事、とび・土工、鉄筋、タイル、鋼構造物といった幅広い領域を一手に担える総合力を持つ工事会社です。
 型枠大工職人の不足による失注を防ぐため、マンパワーの補強と事業構造の改善(工事体制の内製化)に舵を切ります。

 同時に、「まず技能実習生を受け入れ、経験を積ませてから特定技能へ」という順番をたどる企業が大半の中、松建工務店はあえてこの順序を逆転させ、「特定技能人財を技能実習生の指導役もできるような現場の中枢を担える職長クラスに育成する」という明確な方針のもと、外国籍人財の雇用と定着にも本腰を入れていきます。

 しかし、現場ではすぐに、想定していなかった「壁」に直面します。

後編

「そこにあるだろ、それ持ってきて」ーー現場で気づいた、日本人側の課題

 2022年10月、ベトナム出身の特定技能人財2名を迎えた松建工務店。
 当時、特定技能人財の職長への育成を見据えていた松本社長は、しばしば現場に足を運ぶようにしていたと言います。そこで目にしたのは、日本人の職長、職人とベトナム人の特定技能人財とのちょっとしたすれ違いでした。

「職長が『そこにあるだろう、それ取ってこい』『そこに、それをここに持ってこい』と言うんだけれど、特定技能のベトナム人は何をしていいのかが分からなくて、困った顔をしているわけです。そこで、私は、ベトナム人は、多分『それ』とか『これ』って言っても分からないから、はっきりと物と場所を明確に伝えるようにして、と職長に伝えました。(松本社長)」

 具体的には、「このベニヤをここに置きます」「ここにあるフォームタイを5個ちょうだい」「50mmの釘を一掴み、手で渡して」というように、対象物と場所、動作をセットで明確に伝えるわけです。
 この気づきが、松本社長にとって受入れの本質を見つめ直す転機になりました。

外国籍人財の雇用では、日本人の教育のほうが全然大変だし、優先しないといけない。日本人が変わっていかないと。そうしないと、外国籍人財も本当の意味でパワーになってくれないと思うんです。これは外国籍人財から、私たち日本人が逆に教わったことだよね。(松本社長)」

■特定技能人財の働きぶり(写真提供:株式会社 松建工務店)

上も下もない、ひとつの輪で現場を楽しくやりきる

 この経験から、松本社長は、自身の背中を見せるかのように、敢えて率先して、日本人社員の前で特定技能人財と向かい合うようになります。

「外国籍人財の話を聞き出すのを日本人の前で私がやるようにしてたかな。真面目に質問攻めにするんじゃなくて、冗談を入れながら、笑いを誘うような話し方をしながらね。そもそも、私は、いつもそんな感じで喋ってるから自然体でしたね。すると、外国籍人財も私につられて、だんだん笑って話すようになってきて。
 そのやり取りを日本人社員が見て、『あ、自分もそうやって喋ってみよう』みたいな感じで同じように振る舞うように変わってきたかな。だから、今、みんな、どこの現場に行っても笑って仕事をしていますよ。(松本社長)」


 そして、特定技能人財の育成にめどが立った2024年にはインドネシアから技能実習生2名を受け入れ、松建工務店の現場体制も、日本人の職長を頂点とするピラミッド型ではなく、次第に日本人の職長と職人・特定技能人財・技能実習生が横並びで手をつなぐ、フラットなチーム体制になっていきました。


「日本人の職人と、特定技能、技能実習、みんなで仕事を教えて支えあっているような、フラットな関係です。みんなで横に手をつないで、職長がいて、職人さんがいて、日本人もインドネシア人もベトナム人も1つの輪になっているイメージです。別にどちらが上も下もないって感じです。(松本社長)」

 今では、現場以外でも、社員・協力会社を含め、ベテランから若手、さらには外国籍人材まで、世代、国籍や人種、文化の違いを越えて、共に支え合い協働し、仲間の成長をみんなで喜び合う職場となっていると言います。

■某番組の取材を受ける様子(2026年5月下旬)_取材を受ける技能実習生をスマートフォンで撮影するインドネシア人特定技能社員(左写真の中央、右写真)と松本社長(左写真の右手前)


「最初だけ私が雰囲気作りだけすれば、あとは勝手にみんなで盛り上げてくれる。最近だと、私がいなくても、自分たちで社内イベントをするんだよね。協力会社の方も一緒に、20何人で釣り船1隻をチャーターして、みんなで釣りを楽しんだみたいです。(松本社長)」

 釣りイベントでは、協力会社の職長から「明日明後日、人が欲しいんだよな」という声がかかり、その場で応援人員が決まる一幕も。
 垣根のない関係は、現場の助け合いにも直結しています。

■釣りイベントの様子(写真提供:株式会社 松建工務店)

人財に長く働いてほしいからこその「社内の環境整備」

 建設業は繁忙期と閑散期もあることなどから、日給月給が中心で、職人の正社員雇用という枠組みがなじみにくい業態であると言われてきましたが、松建工務店では、社員職人(企業に直接雇用されて給与や社会保険を受け取る技術者)を前提に社内の環境整備にも余念がありません。


“特定技能人財を含め社員職人に長く働き続けてほしい”、“国籍を問わず働いた分は、ちゃんとお金をもらえることを当たり前にしたい”との思いを形にしたのが、出退勤システムの導入です。


「当社では出退勤システムを導入して、どこにいてもスマホで自分で打刻するように伝えています。出勤、退勤、残業時間も全部、1分単位で記録しています。
実は、現場で遅くまで働いたのに残業代も何ももらえてないとすごい文句を言ってる外国籍人財たちをたくさん見てきたんです。
 当社は違うよ、ということを社員に伝えたくてカタチにしました。
 働いた分だけ貰えるというのは、日本人であっても外国人であっても、当然のことです。
 職種も関係ありません。当社では資材運搬の運転手(ドライバー)も打刻しています。当社のドライバーは早朝に資材置き場(埼玉県三芳)を出発し、現場の朝礼と荷下ろしに間に合わせる。そうした一つひとつの働きに対して、正しく対価を支払う体制を整えてきました。(松本社長)」


 さらに、松建工務店では、自動車普通免許の取得費用もすべて会社が負担しているそうです。

「先に入ってくれたフィリピン出身の特定技能人財2人は自動車免許を取得済みで、インドネシア出身の2名も教習所を卒業し、試験に合格するだけ。免許があれば、自分で運転して現場に行けますから。(松本社長)」

そんな松本社長が、今、優先事項として挙げるのは評価制度の改善です。

「組織の拡大に伴い、評価制度も見直しの時期を迎えていると感じています。企業側が一方的に評価を下すのではなく、本人との対話を通じて現在の立ち位置を認識し、将来のキャリア像や目標設定までを一緒につくっていく仕組みへとブラッシュアップしていこうと考えています。(松本社長)」


 松建工務店の就労者を支援するProud Partnersの担当者も、同社の支援の手厚さをこう語ります。

松建工務店の就労者の皆さんはまず辞めません。 就労者のモチベーションがすごく高いですね。頑張りたいっていう感じで盛り上がってるように思います。カスタマーサポートとして多くの会社を見てきましたが、松建工務店の支援の手厚さは素晴らしいです。(西田)」

■特定技能1号人財の定期面談の様子_右から、松本社長、Proud Partnersの支援担当、ベトナム出身の特定技能人財2名

日本人の若手人財からの応募も

 松建工務店が進める「マンパワーの補強」は、外国籍人財の受入れだけではありません。約2年前の2024年前後からSNSとホームページでの情報発信にも注力し、日本人の採用活動にも意欲的です。


 SNSのフォロワーが1,000人を越えた2026年、外部の求人サービスとSNSを連携させたことで、日本人の若手職人からの応募も増え、直近では、6月に25歳、7月に28歳の大工職人が新たにメンバーに加わりました。
 こうした積極的な情報発信の延長線上にあるのが、2026年7月17日に公開された映画「消えて、残る。」です。型枠が姿を消してもコンクリートを支え続けるように、職人の技術と想いが次世代へと受け継がれていくことを願う松建工務店のプロジェクトです。(映画「消えて、残る。」の全編の視聴はこちら


「当社は、型枠大工として、地域の建物、建設業を支えてきたという自負があります。未来の建設業を担う人財に国籍は関係ないのではないかなと。外国籍人財の雇用と同時に、日本人の社員職人も増やしていかないといけないですね(松本社長)」

 型枠工事と建設業への想いを、SNSやホームページで地道に会社の姿勢を発信し続けてきたことが、国籍を問わず「ここで働きたい」と思ってもらえる人財の応募につながっていると言えそうです。

■映画「消えて、残る。」の完成披露会(2026年5月下旬)での集合写真(写真提供:株式会社 松建工務店)

今後の展開

1.「住まい」の確保と自社寮の建設
 外国籍人財の定着が順調に進む松建工務店ですが、今、最も頭を抱えているのが「住居の確保」だといいます。

「当社では、民間の建物を探索して良さそうな物件があれば入居の審査を依頼して、というのを地道にしているのですが、断られることが多いんです。世間の目があるから、というようなことで、外国籍人財が賃貸物件に入居するのは、すごくハードルが高いと感じます。(松本社長)」

 この課題に対して、松本社長が思い描くのは社員寮の建設です。

「大きな食堂、みんなで入れる大風呂やシャワールーム、大きなモニターを備えた会議室。そこで技能実習生が特定技能人財の話を聞いたり、スキルアップの勉強会や、建設分野特定技能2号評価試験の試験対策講座を受けられるような、教育の場も兼ねたコミュニティを構想しています。
居抜きの物件を見つけて、みんなでどんな寮にするかを考えるのも楽しそうだね。
例えば、図面を一緒に書いたり。それを1つの仕事として、自分たちで自分の部屋を作るっていうリノベーションプロジェクトをやってみても良いな、と最近思います。考えているということは、私の性格上、どうにかしてこれを実現してやるっていうふうに、どこかで思い切ると思います。(松本社長)

2.特定技能人財の母国での事業展開(海外進出)
 そしてもう一つが、海外進出です。ベトナムやインドネシアといった、特定技能人財の母国で現地法人を設立し、現地にあった事業を展開することです。松建工務店で技術を習得した特定技能人財の帰国後の活躍の場にもなるからです。

松本社長は、日本で技術を身につけた特定技能人財が、母国に戻ってからもその経験を生かして働ける道を作りたい、という思いを次のように語ります。

「インドネシアなりベトナムなりで現地法人設立を視野に入れてみるのも悪くないんじゃないかなと。特定技能人材に現地法人の運営を任せて、ゆくゆくは社長に就いてもらったり。商習慣など、いろんなハードルがあるとは思いますが、日本で学んだことを生かして、でも全く日本のやり方と同じではなく、現地の住居水準や予算に合わせたやり方ができるようになれば、特定技能人材も、その会社を運営しながら現地で生活していけますし、現地の雇用創出にもつながるのではないかと。

 さらに、現地法人で働きたい現地人材は、まずは日本の松建工務店で特定技能ビザで就業して技術を身につけてもらうようにできれば、当社としても、日本が誇る型枠工事の技と誇りを未来につなぐことができます。

 建設業は土着の産業です。

 特定技能として当社で働く彼らであれば、現地の地域特性も分かっていますし、何よりも型枠工事、大工工事、とび・土工、鉄筋、タイル、鋼構造物といった幅広い領域を一手に担う当社のことも分かっていますから、現地と日本のやり方をうまく融合してくれるのではないかと思っています。(松本社長)」

■松本社長(右手前)と外国籍人財の皆さんの笑顔(写真提供:株式会社 松建工務店)


3.特定技能人財を受け入れる企業の声を届けたい
 2026年4月の外食産業における特定技能1号ビザの新規発行停止を受けて、出入国在留管理庁では、「特定技能1号の分野ごとの受入れ見込数や在留者数等」を掲載し、受入れ上限数に対する充足率を公表しています(2026年3月末時点・速報値はこちら)。


 今後の特定技能1号人財の受入れについて、松本社長はこう語ります。

「特定技能の受入れ上限数について、今、国全体でよく報道されていると思います。特定技能人財を受け入れている会社としては、制度の継続性、連続性みたいなものを担保したいと思います。
 プラウドパートナーズでは、2026年4月に特定技能コンソーシアムを設立されたと聞きました。
 私としては、プラウドパートナーズだけが先導していくのではなく、我々も使ってほしい。
 受入れ企業としては、プラウドパートナーズさんに人財を紹介してもらって、その人財の仕事や日常生活のサポートを一緒にしている。

 つまり、受入企業と登録支援機関でもあるプラウドパートナーズは、特定技能人財を大事にしているパートナー同士です。
 プラウドパートナーズさんと一緒に、企業の壁を超えて政府に働きかけて、現場の生の声、ニーズを国に届け、政策に生かしてもらいたいですね。(松本社長)」

そして最後に、外国籍人材の雇用と企業成長について松本社長はこう語ります。

増員と同時に技術水準、施工品質も高めていきたいので、やはり今後は教育と育成ですね。教えて育て、型枠大工職人として育て上げたい。今の特定技能1号人財が職長になって特定技能2号に移行して、というように、中枢を担う人財を増やしていきたいですね。特定技能2号人財が増えれば、1号人材も増員できますし。

 そして、国籍に関係なく、家族のように社員を大事にしていきたいですね。

 私は、人を大事にするのと同じように、隠れている利益を大事に、モノを大事に、ということを常に社員に伝えています。例えば、型枠の材料1つ1つが、やっぱり形を変えた資産だから、安易に捨てずに大事にするという認識をみんなで共通にし、利益率を高める行動を一人ひとりがすることで、企業としてもっと大きくなると思いますね(松本社長)」

■株式会社 松建工務店 松本社長


以上

数字で見る、特定技能人財の受入れ前と受入れ後

特定技能人財の受入れ前(2022年) 特定技能人財の受入れ後(2026年)
従業員数 11名(うち、型枠大工5名) 18名(うち、型枠大工14名)
事業構造 人手不足による
・工事失注
・手間工事の外部発注
工事の内製化による高利益
毎月の現場数 10現場 17~22現場
利益率 5〜8% 12〜18%
売上高 (非公表) 2022年の約1.5倍

株式会社 松建工務店
前編の記事
株式会社Proud Partners、特定技能制度(建設)の登録支援機関としての強み
特定技能人財に関する問合せ